あいさつ

森島 聡子

造血幹細胞移植医療体制整備事業
実施責任者
森島 聡子

琉球大学大学院医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 (第二内科) 准教授

造血幹細胞移植は、難治性の血液がんや造血不全の治癒を目指して行われる強力な治療法で、移植によって多くの患者さんの命が救われています。 沖縄は本州・九州からも遠く隔たった地域で、県を越えた患者さんの移動は他の地域に比べてハードルが高く、可能な限り沖縄県内で全ての移植医療を完結できる体制を作ることが必要と考えています。

沖縄県内で移植を実施しているのは当院を含めて2施設のみで、当院では県内の病院から移植のために紹介される患者さんを多く受け入れています。 移植を成功させるためにはタイミングを逃さず適切な時期に移植を行うことが必須であり、移植施設では県内の血液診療を実施している施設と綿密な連携を取りながら移植を実施しています。

厚生労働省は、全国どの地域においても質の高い移植医療提供体制の構築を目指して「造血幹細胞移植医療体制整備事業」を実施し、主に造血幹細胞移植医療を担う人材育成、造血細胞移植コーディネート支援、造血幹細胞移植地域連携を三本柱として事業を推進しています。

琉球大学病院は、令和2年度より、全国で12のブロック拠点病院のひとつ、沖縄ブロック拠点病院として選定されました。 私たちは本事業で、造血細胞移植専門医、造血細胞移植コーディネーター(HCTC)、長期フォローアップ外来(LTFU)担当看護師などの人材育成に取り組み、沖縄県の造血細胞移植成績の向上と患者さんの移植後の生活の質の向上を目指します。 また、沖縄県の日本骨髄バンクのドナー登録数は、人口1000人比で37.25人と全国平均の8.87人を大きく上回っており、都道府県で最多となっています。 沖縄県内の骨髄バンクドナーのコーディネート期間を短縮し、県内で骨髄・末梢血幹細胞採取を全て実施できる体制を整えます。 さらに離島も含めた地域の病院と連携を深めて、移植後も地元の病院で診療を受け、安心して生活・社会復帰ができるような体制作りに取り組みます。

移植を受けた患者さんに関わる様々な職種の皆さんがスムースに連携して、沖縄県内で質の高い移植医療を提供できるように努めます。皆様のご協力とご支援をよろしくお願い申し上げます。

浜田 聡

造血幹細胞移植医療体制整備事業
小児科責任者
浜田 聡

琉球大学病院 小児科 講師/診療教授

造血細胞移植は、難治性血液腫瘍や造血不全症に対して行われる根治療法です。小児造血細胞移植の対象疾患は多様であり、一部の難治性固形腫瘍に対して、免疫細胞療法として大量化学療法に引き続き、同種造血細胞移植を行い、効果が期待できます。さらに成人移植にはない特徴として、先天性免疫不全症や先天性代謝疾患も対象となります。移植法の進歩により、成績は向上し、多くの子供たちを救命することができましたが、小児期に造血細胞移植を受けた子供たちは様々な移植関連合併症を引き起こし、大きな課題となっています。成人とは違い、小児は発達・発育途上にある未完成な個体であり、とくに乳幼児期に移植を受けた場合は、その影響は甚大です。移植関連合併症は多岐にわたり(慢性移植片対宿主病、内分泌障害、成長障害、妊孕能低下、学習障害、2次がんなど)、関連分野の専門医に加えて、看護師、心理士、ソーシャルワーカーなど他職種が参加する長期フォローアップチームを組織し、包括的に取り組む必要があります。小児がんを克服した方(サバイバー)は、原病が治癒したあと、進学、就職、結婚など人生の節目を経験し、次世代を担う社会人として長い人生を歩んでいきます。そこで成人診療科との連携を通して、スムーズに移行期医療を進めていくことも含めて、長期フォローアップ体制を充実させていくことは、長期生存者を生涯支えるための重要な基盤となります。

これからも、小児移植に精通した他職種の方々の人材育成に取り組んでいき、多くの移植を経験した子供たちを支える力となっていけるように努めてまいります。今後とも皆様のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。